異種金属接触によって起こる電食(ガルバニック腐食)とは

金属部品やねじを使用する現場では、異なる種類の金属を組み合わせて使用することが多くあります。しかし、金属の組み合わせによっては「電食(でんしょく)」と呼ばれる腐食トラブルが発生することがあります。

電食は正式には「異種金属接触腐食」または「ガルバニック腐食」と呼ばれ、配管、建築部材、自動車部品、設備機器など様々な分野で発生する可能性があります。特にねじやボルトは異なる金属同士を固定する部品であるため、この現象が起こりやすいポイントになります。

ここでは、異種金属接触によって起こる電食の仕組み、どのような腐食が発生するのか、そしてねじを使用する際の対策について詳しく解説します。

電食が起こる仕組み

電食は、電気化学的な反応によって発生します。

異なる種類の金属には、それぞれ「イオン化しやすさ(電位)」という性質があります。腐食しやすい金属を「卑な金属」、腐食しにくい金属を「貴な金属」と呼びます。

例えば次のような関係があります。

表の左にいくほど腐食しやすい金属になっています。金・プラチナ・銀などが貴金属と呼ばれるのは、この配列によるものです。

これらの金属が直接接触し、さらに湿気や水分、塩などの電解質が存在すると、金属間に電位差が生まれます。その結果、電子が移動し、金属同士が小さな電池のような状態になります。

このとき

卑な金属 → 電子を放出して溶ける(腐食する)
貴な金属 → 電子を受け取る(腐食しにくい)

という反応が起きます。

そのため、異種金属が接触している部分では「卑な金属側だけが急速に腐食する」という現象が起こります。

ねじ部品で発生する電食の特徴

ねじやボルトは異なる金属部材を固定する部品であるため、電食が発生しやすいポイントになります。特に次のような特徴があります。

接触部周辺で局所的な腐食が起こる

電食は接触している部分に集中して発生します。

例えば

・ボルトの頭周辺だけ錆びる
・ワッシャーの周囲だけ腐食する
・ねじ穴の周囲だけ腐食する

といったように、局所的な腐食が発生します。

小さいねじ側が激しく腐食する

電食では「面積の小さい金属側」に腐食が集中する傾向があります。

例えば

大きなステンレス板 + 小さな鉄ボルト

という組み合わせの場合、鉄ボルトに腐食が集中し、短期間で錆びたり破断したりすることがあります。

腐食の進行が非常に速い

通常の錆びは空気や水分によって徐々に進行しますが、電食の場合は電流が流れるため腐食が加速します。

条件によっては、通常の腐食よりもはるかに速いスピードで劣化が進むことがあります。

ねじでよくある電食の組み合わせ

ねじの現場で比較的よく見られる電食の例には次のようなものがあります。

アルミ材 × ステンレスボルト

アルミは鉄よりも卑な金属のため、ステンレスボルトを使用するとアルミ側が腐食しやすくなります。建材、機械フレーム、設備などでよく発生する組み合わせです。

鉄鋼材 × ステンレスボルト

ステンレスは鉄よりも貴な金属のため、鉄部材や鉄ボルトが優先的に腐食することがあります。屋外設備や建築金物などで注意が必要です。

銅配管 × 鉄ボルト

銅は比較的貴な金属のため、鉄部品やボルトが腐食しやすくなります。配管設備などで見られることがあります。

電食が発生しやすい環境

次のような環境では電食が特に起こりやすくなります。

・屋外環境
・雨水や結露が発生する場所
・海沿いの塩害地域
・湿度の高い場所
・薬品や塩分を含む環境

水分は電気を通す役割を持つため、金属間の電流が流れやすくなり腐食が進みやすくなります。

ねじ使用時の電食対策

電食は設計や施工時の対策によって大きく防ぐことができます。

異種金属を直接接触させない

最も効果的な方法は、金属同士を電気的に絶縁することです。

例えば

・樹脂ワッシャー
・樹脂ブッシュ
・ゴムパッキン
・絶縁スペーサー

などを使用して、金属同士を直接接触できなくすれば電気的な接触を防ぐことができます。また樹脂製のねじを使用するのも効果があります。

同系統の金属を使用する

できるだけ同じ種類の金属を組み合わせることで電位差を小さくできます。

例えば

・ステンレス部材 → ステンレスボルト
・鉄鋼材 → 亜鉛めっきボルト
・アルミ部材 → アルミまたは適合ボルト

めっきや塗装による防食

表面処理によって金属を保護する方法もあります。

例えば

・溶融亜鉛めっき
・ジオメット処理
・防錆塗装

などがあります。塗装やコーティング系の表面処理であれば電気的に絶縁されるものも多く効果が見込めます。ただし、塗膜や皮膜が傷つくとそこから腐食が進行する可能性があるため注意が必要です。

水分が溜まりにくい構造にする

電食は水分が存在することで進行します。

そのため

・水が溜まりにくい設計
・排水構造を作る
・密閉部に水が入らないようにする

といった工夫も重要です。

まとめ

異種金属接触による電食は、異なる金属が接触し、湿気・水分・塩分などの電解質が存在すると発生する腐食現象です。

特にねじやボルトは異なる金属部材を固定するため、電食が発生しやすい箇所になります。

電食の主な特徴として

・卑な金属側が優先的に腐食する
・接触部周辺で局所的に腐食が起こる
・面積の小さい部品(ボルトなど)が腐食しやすい
・条件によっては腐食が急速に進行する

といった点があります。

そのため、ねじを使用する際には

・異種金属の組み合わせを考慮する
・絶縁ワッシャーなどを使用する
・適切な表面処理を選定する
・使用環境(湿気・塩分)を考慮する

といった対策を行うことが重要です。

ねじは小さな部品ですが、材料の組み合わせや環境によっては腐食トラブルの原因になることがあります。適切な材料選定と防食対策を行うことで、設備や構造物の耐久性を大きく向上させることができます。